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ナノ物性工学

ナノテクノロジーの扱う領域は、1 nmから1 mmであり、原子・分子、電子の大きさ(~0.1 nm)であるミクロスコピックと人間が目で見ることのできる範囲であるマクロスコピック(~1 cm)との中間(メゾ)であることから、従来メゾスコピックと呼ばれています。物質がメゾスコピックな大きさになると、ミクロスコピックな性質やマクロスコピックな性質とは物理的・化学的に異なる性質が現れます。

本研究室では、イオンビームと固体表面との相互作用に関する基礎研究、それを応用したメゾスコピックな領域での固体や液体の構造解析、材料加工法・表面分析法の開発等に関する研究をおこなっています。

教員

* メールアドレスの後ろに .kyoto-u.ac.jp を補ってください。

中嶋 薫 ( Kaoru NAKAJIMA )

中嶋 薫准教授(工学研究科)

研究テーマ

高速イオンが固体に衝突したときに起こる様々な現象を観測することによって、イオンと固体間の相互作用について調べています。また、それらの応用として高分解能RBSを開発するともに、それを用いた材料の分析、開発に取り組んでいます。

連絡先

桂キャンパス Cクラスター C3棟 b4S02室
TEL: 075-383-3707
E-mail: kaoru@kues

研究テーマ・開発の紹介

高速イオンと表面の相互作用の解明

加速器で作り出される高速イオンは、高精度の表面分析や表面改質、新物質の合成などに利用され、ナノテクノロジーを支えています。これらのイオンビームを利用した技術の開発には、高速イオンと物質表面の相互作用を理解することが必要です。

本研究室では、物質の表面にすれすれの角度でイオンを入射させ、イオンが物質中に入らずに反射される現象(イオンの鏡面反射)を利用して、高速イオンと表面の相互作用を研究しています。

図-1はイオンが物質の表面で反射するときに生じる種々の現象を模式的に示しています。イオンの大角散乱、物質原子のはじき出し、イオンと物質の間の電子のやり取り、2次電子の放出、核反応などが生じています。これらの現象の理解は、次項で説明しているイオンビーム分析などのイオンビームを利用した応用技術の基礎となります。

イオンが物質の表面で反射するときに生じる現象

図-1 イオンが物質の表面で反射するときに生じる種々の現象

高分解能RBS法の開発と超小型化に関する研究

ナノテクノロジーにおいては、サブナノメーターの分解能を持った原子レベルの分析手法の開発が求められています。

本研究室では、非破壊的に組成分析・構造分析が可能であるラザフォード後方散乱法(RBS法)を改良して、その深さ分解能を従来の10nm程度から0.2nmにまで高め、世界で初めて1原子層ごとの組成分析が可能な高分解能RBS法を開発しました。
図-2は赤外素子等に利用されるPbSe結晶の分析例です。各原子層中の鉛とセレン原子が分離したピークとして観測されています。

さらに、神戸製鋼所との共同開発により、高分解能RBS装置の小型化と商品化に成功しました。開発した高分解能RBS装置は、TMR磁気ヘッドや次世代の超LSIの開発等に利用され始めています。

現在、高分解能RBSを用いた分析を通じて、内外の企業や大学等と連携して新材料の開発を進めています。また、工場でのインライン検査等への幅広い利用を目指して、新しい分析原理による超小型化や高性能化の研究をおこなっています。

PbSe結晶の高分解能RBS測定例

図-2 PbSe結晶の高分解能RBS測定例

高速クラスターイオンと物質の相互作用およびその応用に関する研究

多数の原子で構成されるイオンをクラスターイオンといいます。高速のクラスターイオンを物質に照射すると、非常に狭い領域に高密度のエネルギー付与が起こるので、1個の原子から成るイオンを照射したときと全く異なる効果が得られます。例えば、1個の高速C60イオンを窒化シリコンなどの絶縁体に照射すると、表面から数千個もの原子が二次粒子として放出されます。本研究室では、高速クラスターイオンと物質との相互作用の解明を目指した研究を行うとともに、特異な相互作用を利用した高効率な加工法や、高感度な表面分析法の開発に取り組んでいます。

図-3は、720 keVのC60イオンを照射した非晶質窒化シリコン薄膜の透過電子顕微鏡像です。イオンの軌道に沿って薄膜の密度が低下した円柱状の領域(イオントラック)が形成されています。

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図-3 720 keV C60イオンを照射した非晶質窒化シリコン薄膜の透過電子顕微鏡像