精密計測加工学

「ものつくり」産業を支える機械加工技術の高度化を目指して

機械加工は、現代の「ものつくり」の産業を支える基本技術のひとつです。

本研究室では、「ものつくり」の現場をささえる生産加工技術の高度化を目指して、そのための必須技術であるNC工作機械を核とした各種システムの自動化・知能化をすすめる方法について主に研究開発をおこなっています。

特に、NC工作機械の知能化による熟練技術者の技能・経験のシステム化、金型加工の知能化など、機械加工の自律化・知能化は重要なテーマのひとつです。また、制御・計測・設計の観点からの高精度位置決め技術へのアプローチ、リニアモータ駆動・パラレル機構など新しい機構を持った工作機械の研究開発。など様々な観点から工作機械の高度化について研究しています。

教員

* メールアドレスの後ろに .kyoto-u.ac.jp を補ってください。

松原 厚 ( Atsushi MATSUBARA )

松原 厚教授(工学研究科)

研究テーマ

微細加工技術とそれに必要な高精度位置決め技術、高精度・高生産性を達成するための加工技術を、加工機・計測・設計・制御の観点から研究しています。

連絡先

桂キャンパス Cクラスター C3棟 c1S07室
TEL: 075-383-3675
E-mail: matsubara@prec

河野 大輔 ( Daisuke KONO )

河野 大輔准教授(工学研究科)

研究テーマ

高速・高精度な工作機械の実現を目的とした機械構造と機械要素の研究を行っています。具体的には、機械の剛性と振動特性の評価法、据付設置におけるマウント配置法や振動抑制ダンパの開発、先進材料を用いた機械開発、送り系の高精度化、これらの研究において重要な接触面の剛性・減衰性に関する研究に取り組んでいます。

連絡先

桂キャンパス Cクラスター C3棟 c1S08室
TEL: 075-383-3676
E-mail: kono@prec

研究テーマ・開発の紹介

知能化NC工作機械の開発

マシニングセンタに代表されるフレキシブルなNC(コンピュータにより数値制御される)工作機械においても、より高い生産性を実現するために、高速化が近年急速に進みました。しかし、機械加工は熟練技術者の知識と経験が必要不可欠な分野です。高速マシニングセンタを用いて、実際に高能率で、かつ精度を落とさずに加工をおこなうためには、熟練技術者にとっても操作や加工条件の設定は極めて難しくなります。その結果、高速マシニングセンタが本当にその能力を発揮しているのは、一部の特殊な工程に限定されているのが現状です。

本研究室では、本来熟練者が行っていたオペレーションを、コンピュータが知能的におこなうことができる自律的加工システムの開発を、重要な研究テーマの1つとしてきました。このプロジェクトでは、工作機械自身が自律的に高能率加工をおこなうため、以下のような機能を持った、知能化NC工作機械を開発することを目的として、必要な技術の研究をおこなっています。

  • 最適な加工条件と制御パラメータを自動設定するためのデータベース
  • 加工状態のモニタリングとオンライン適応制御システム
  • 固定サイクルを基本単位としたフィーチャベースの工程設計 

知能化NC工作機械

図-1 知能化NC工作機械の全体構成

送り駆動系のサーボ制御

近年の技術進歩から、NC工作機械の高速・高加減速化は急速に進みました。それに伴い、高精度位置決め装置においてサーボ制御の重要性はますます高まっています。
例えば、高速で駆動される大型のNC工作機械や、リニアモータによる駆動系では、駆動力による構造振動が問題となります。このような高精度位置決め技術に必要とされる技術を、制御・計測などの面から研究しています。

送り駆動系のテストスタンド

図-2 送り駆動系のテストスタンド 

実験室のマシニングセンタ

図-3 実験室のマシニングセンタ(安田工業株式会社製)

金型加工の高能率化

日本の金型加工技術の優秀さは世界的に知られていますが、金型加工はいぜん熟練工の技術に依存する部分が多い技術です。熟練工が減少している現状の中で、非熟練者をコンピュータ応用技術が支援し、また熟練者の技術をシステム化する試みは、様々な観点から現在多くの研究機関・民間企業が取り組んでいます。

本研究室では、主にCAD/CAMと工程設計の観点から、金型加工の知能化に取り組んでいます。切削抵抗の制御を基本とした加工条件の最適化、工具への負荷を押さえ高硬度材の高速加工を可能とする工具パス生成、固定サイクルを基本とした工程設計法、加工条件データベースの構築、などを研究しています。

ラジアスエンドミルを使ったアイロン金型の加工例

図-4 ラジアスエンドミルを使ったアイロン金型の加工例 

実際の加工後

図-5 実際の加工後

パラレル機構工作機械の動作制御

90年代以降、全く新しい機構を持った工作機械が幾つか提案されてきました。互いに直交する送り駆動軸を基本としている従来の工作機械の機構と完全に異なり、回転ジョイントとリンクにより機械を駆動されるパラレル機構工作機械もそのひとつです。

パラレル機構工作機械は、6本のストラット(脚)を独立に制御することにより、容易に6自由度の加工がおこなえることが最大の特長ですが、運動精度・剛性などにおいて解決すべき課題も多い機械です。例えば、パラレル機構はその構造から重力による変形の影響を受けやすく、それが運動精度を悪化させる場合が少なくありません。また、主軸をストラットで支える構造になっていることから、従来の機構と比較して切削力などの外乱に対する剛性が課題であることは否めません。

本研究室では、このような課題を解決するため、主に動作制御の観点からパラレル機構工作機械の高精度化について研究をおこなっています。

パラレル機構工作機械

図-6 パラレル機構工作機械 (オークマ株式会社製)
(DBB測定によりキャリブレーションをおこなっている)  

3次元CADを用いたパラレル機構工作機械の運動精度解析

図-7 3次元CADを用いたパラレル機構工作機械の運動精度解析